Wanderer's hobby
オーストラリアツーリングレポート
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1995年6月、梅雨空ですっきりしない天気でしたが長年の夢だったオーストラリアツーリングに出発しました。6月ということで飛行機の中は、式を終えたのであろう、おアツイカップルばっかり!!一人寂しくビールを飲みながら、まだ見ぬ”大陸”に思いをはせ、約9時間のフライトで冬のブリスベンに下り立ちました。おいらの恋人はこの地にいるはず!!日本で予約していた恋人は”ヤマハXT600ビッグタンク付き”。ほんの少しの間の”相棒”。「よろしく頼むゼ!」。シートをそっと撫でてから跨り、ハンドルの幅を瞬時に覚え、ミラーを合わせている時に、ほんの少しだけ相棒に血が通ったような気がした・・。チョークを引きセルを回してみる。ズ太いツインサウンドからどのくらいのトルク感があるのか見当を付けてみる。”大陸”にふさわしい”力”と判断する。「まー大陸といっても5大陸のうち世界最小の大陸だもんな・・・。」軽く考えてみたものの、世界最大の島であることを忘れている・・。走ってみると、ま・こ・と・に・広い!!日本の何倍の面積だったっけ?
手慣れた手つきでパッキングを済ませ町をあとにする。ブリスベンから西に向かう。半日くらいは日本のいなかの国道がめっちゃすいてる状態を走ってるカンジで、走りやすかったです。初めての給油はやはり緊張しました。自分でコックを開け、レバーを引き、満タンにする。あとはその給油レバーの番号を店の中のおばちゃんに申告する。20Litter入るビッグタンクは満タンまでに時間かかるかかる。2回目の給油を終えたあたりから何もない風景が広がっていきました・・。
ん・・・?道の脇に生体反応が!!!よく見ると・・・。「うぉー!野良カンガルー!!初めてみたーー!!」。でもあいつら危険なんです・・。まーーっすぐにしか走れないもんで数百m向こうでバンバン横断してくれるしネ。手をあげろっつーの。ま、昼間はバイクの音に気づいて大抵は逃げてくれるんだけど、夜はライトの光につっこんでくるんだって・・。バイクは夜走らないよう注意されてたのでぶつかることはありませんでした。でも一回だけエミューとニアミス。僕と同じ方向に路肩付近を走っていたから向こうの草むらに消えてくれるかナー・・、と思ってたらじわりじわりと道路の方に寄ってきて、2メートルくらいの至近距離を通り過ぎていきました。恐かった〜・・。
初日のキャンプ場は沖縄のキャンプ場みたいでした。椰子の木みたいなのが生えてて、少し寒い南国といった趣でした。4時くらいにはテントを張り終えさっそく町のバーへ・・。ビールとサラミで少しおなかを膨らませ、それからキャンプ場で料理しようと思ってたところ、飛行機の疲れがきたのか、酔いが回ったのか、ヒジョーに眠たくなり、料理する前にウトウト・・。ハッと目が覚めたら、空には初めての南十字星!!めっちゃ感動!!南十字の下で食べた野菜たっぷりカレー、その味は忘れられません。数え切れない星の優しい光に抱かれて、その星達の仲間、地球を時々おんぶ、時々だっこしながら再び眠りにつきました・・。
3日目辺りからいよいよ期待していたダートの始まり!シンプソン砂漠を南下しバーズビルトラック〜マリー〜ウードゥナダッダを目指す・・。千数百キロのダートを絶対走りきるぜ!!・・と意気込んでたのですが、僕が訪ねる3,4日前からの大雨が影響してそのダートはスーパースリッピー。ダート始点に立ってみたとき確かに誰も走った様子はありませんでした。しかしココまで来たのだからあきらめるわけにはいかない・・。バンザイアタック!!意を決してダートに飛び込む!!
玉 砕 !
10Km進むのに60分・・転ぶ度に荷物を下ろし、バイクを起こし、荷物を積む・・・。ビッグタンクに荷物フル満載のバイクはスーパーヘヴィー。「もーダメ!!あきらめた!!。千数百Kmも行けるかー!!」また10Km戻るのに90分・・。もう何回、転んだか分かりません・・。写真を見ていただくと分かるのですが、1枚目のバイクはまだナンバーが見えるくらいきれい。その後どんどん泥だらけになっていきました。”相棒”に悪いな〜と思いながらも「いいじゃん、僕も泥だらけ!!それでこそ”相棒”だろ。」と、互いに励まし合う。でも6月だからオーストラリアは冬。雨期じゃないはずなんだけどなー。
うーーーん、突然やってくるもんですね。人生最大のピンチは・・・。何回も転んで、荷物おろして、バイク起こして・・・を繰り返していたところ、日が沈み次の町まで辿り着けないことになってしまいました。オーストラリアの田舎って町から町までの間はまさに、なーーーーーんにも無いんです。ドラゴンクエストの世界です。スライムでもいるんじゃないか??。通る車も日に2,3台。夜のダート、しかもどろどろのダートを走るのはカンガルーのこともあり、非常に危険であると判断し、「もし次、転んだらその道ばたでテント張ろう・・・。」と決めました。・・・・・でっかい水たまり(川?)に足を取られて、本日何十回めかの転倒。豪州初野宿決定。バイクを道から10mくらい離して止め、暗くなってきた辺りに少しの不安感を覚えつつテントを張ろうとして荷物を見たら・・・・・無いんです!!テントが!!「ゲゲゲゲゲッ・・・・!!」どーすんだ?雨降りそうだし、そうでなくても地面はドロドロ。おいらの不安感はレッドゾーーン。どこで落としたんだろう??転びまくってるから見当付かない。もちろん今から探しに引き返すわけにはいかない。あるものでなんとか夜を乗り切るしかない。寝袋はあった。おッ・・ブルーシートがあった!これを引いて寝袋にくるまって・・・あとは雨が降らないことを願うだけ・・・。オレンジ一個の夕食を終え寝袋にくるまる。ピューピュー風が吹き、雲がとても早く流れていき、南十字も隠れがち・・。20分くらい寝、風の音で目が覚め、空を眺めて雨降るな!と、願う。そのパターンを15回ばかり繰り返したであろうその時!やっと東の空が明るみ始めました。「助かったーー・・・。」この時ほどうれしかったことは過去にナイね!
ほとんど寝た気がしないんだが、そうそうにパッキングし最初からカッパを着込み(泥はね対策)、さあ出発!!その日は朝からピーカン!!所々ですがダートも乾いてきてる。やっぱりピンチの後にチャンスあり(?)人生楽ありゃ苦もあるさ・・。ふと遠い前方を見てみると、抜けるような空の青が地上まで降りてきてるんです。そう!!地平線です!!しかも360度見渡す限りの地平線。昨日は走ることに一生懸命で全然景色なんて見てなかったんです。「これだよ・・これ・・・」声に出して言ってみる。ちょびっとだけ涙が出ました。この景色を見たくてここまでやってきたんだ!バイクを止めてみる。エンジンを切った途端、耳鳴りがするような静寂。何の音も聞こえない。今ここから見える地平線の範囲に人間は俺ただ一人!!ものすごくぜいたくな気分になりました。
地図から見当を付けてみると次の町まで約70Km。午前中には着けるだろう。お・・・突然チェーンがはずれるトラブル。「こんなのトラブルの内には入らないゾ・・」昨日のことを考えると鼻歌気分でメンテナンス。毎晩増締めや各部の点検は行ってたんだけどなー。なんかチェーンがかなり伸びてる。ホイールをスイングアームの一番後方にセット。どろどろになりながらも自宅で整備しているほどの余裕がありました。”相棒”の鼻歌も聞こえてくるみたいだ・・。やっと次の町に着いて初めて国際電話かけてみる。「何も問題ないよ・・」とちょっと強がる。5日ぶりの日本語。ちょっと落ち着く。・・・・昼過ぎか・・・その町にはテントはなく次の大きい町は・・っと・・・。「Mt.Isa」500Km先ね・・。今日中には着けそうにないのでこの町にステイしよう。洗濯物がたまってたしテントもなし。街に一軒のモーテルで今日はゆっくりしよーーっと。
マウントアイザはさすがにでかい街でした。「K−mart」でテント購入。チェーンも欲しかったけど、バイク屋がわからずそのまま通過。その日から絶好調。最高記録!一日830Km!!その日は一つの信号もなく、道も一本道。もうここまで走るとブレーキのかけ方や曲がり方を忘れてしまうゾ。テナントクリークって街でホントにどこまでブレーキかければ曲がれるのか頭で考えてから交差点に進入したのには笑えました。
デビルズマーブルズやキングスキャニオン、シンプソンズギャップと、とりあえずのポイントは押さえていきました。スチュアートハイウェイから西に進路を取り、ウラルナショナルパークを目指す!!千数百Kmのダートをあきらめたので少しでもダートを走ろうと舗装されているルートではなく、その南にあるマウントコナーに向かうダート道をチョイス。200Kmばかりあったのかな?その道中すれ違った車はたったの1台。いつもより大げさにピースサイン。ヤツにはひげが生えていた・・。ダートも終わり、さらに西に向かう。地平線をにらみつけてスロットルをあおる・・。ふと気が付くと左目に入ってくる地平線の一部に軽〜い突起物が・・。「あれ・・あれれれ・・・もしかして!!」うぉぉぉぉぉ!エアーズロック!!左手でガッツポーズ、鳥肌バリバリ、メットの中では叫び声、疲れも苦労もまるっきりふっとんだッ!!すっげーー・・・世界最大の一枚岩、地球のへそ、アボリジニの聖地と、色々呼び名はあるけれどまさに圧巻!!地図上ではまだ数十キロ先のはずなんだけど、近づくに連れその存在感を増していき「おいらはヤツに歓迎されてるんだろうか?」っていう、なんか微妙な感覚が押し寄せてきました。ここに来るのを目標に走って来たのに、その目標に近づくことの怖さというか、不安感・・。なんなんだろうね?
ついにその足下までやってきました。あたりまえのごとく写真撮影。ずーーっとながめてても飽きそうにありません。まだ昼すぎだったので登ろうか、とも思ったのですが明日の天気予報も快晴とのことなので、朝焼けを拝見してから登ることにし、マウントオルガを歩こうと決めました。30Kmくらい走ったところにそれはありました。「Valley Of The Wind」、”風の谷”とはホントいいネーミングだなーと思った。36個の奇岩の間を自由自在に動き回る風達・・。気まぐれなヤツが時々僕の頬をなでてくる。メーヴェがあれば僕もナウシカのように飛びたいよー・・。歩いてみると、どっかから王蟲の子供でも出てきそう。約2時間ばかり歩き回り、夕方が近づいてきたので少し離れたところから見てみたくなり、サンセットビューという展望地へ行ってみました。日が沈むまでの約1時間、まさに時間によって7色に変化していきます。空が青から紫に変わっていき土色だった岩肌が夕日に照らされて赤く燃え上がるそのコントラストの妙。人間がこんな色彩を作れと言われても絶対に出来ないだろうネ。自然ってすごいなーと素直に感動できた一日でした。
エアーズロックリゾート内のキャンプ場は最高の設備。でも観光客も多く(俺もだけど・・)夜遅くまで騒がしかった。近くにある超豪華リゾートホテルにGパンで入り込みビール3杯飲んで再びキャンプ場へ・・。明日は登るぜ!!
カシオペアの「ASAYAKE」が鼻歌で出てくる。・・・ちょーっと寝過ごしちゃって朝焼けを見ることが出来なかったので歌っているのだ!「くそー昨日騒がしかったあのスパニッシュのせいで・・・ぶつぶつ・・・。」目覚ましもかけてなかったのでもう日が昇ってしまってました。まあいっか。頂上からの地平線が呼んでるよ。ガツーーンと行っちゃおう。気合いと共にチェーンを頼りに登っていく。すぐに足が痛くなる。・・・軽く登り切れると思ってオフロードブーツで登っていたのだ・・。足首は固定されてるし、つま先は滑る金属だし、困っちゃいましたよー。途中で日本人女性に出会う。まだまだ先は長いらしい・・。8合目(?)あたりまで来たであろう時、少しずつ目に入ってくる地平線が多くなってきました。空は限りなく青く、大地は低い木々の緑をたたえた赤土。見渡す限りに広がる地平線を眼下に置いてついに頂上到着!!「・・・・・・・・・・・。」言葉を失うくらいの壮大さを持つ風景。圧倒的で無骨な岩の上の風景。この風景は人間の歴史の長さとは比べ物にならないくらい長い間ココにあり、大勢の旅人を受け止めてきたんだろう。時に静かに、時に激しく受け止めてきたんだろう。オルダス・ハークレーはこう言っている。”風景は自分自身がなんであるかを思い出させることができる・・”。頂上からの風景を座って眺めてみると自分自身のことを自然に考えている。人間ってホンット小さいよなー・・。地球は大きいよなー・・。星達の住処は想像できないくらい大きいよなー・・。・・・・・・俺ってホンット小さいよなー・・・・・。
この大地は僕に色んなことを教えてくれました。ソロツーリングゆえの難しさもありましたが、楽しさもありました。一人でいろんな事を考える時間をくれました。自然の優しさ、厳しさを教えてくれました。膨大な時間の流れの一部を感じさせてくれました。日常生活のしがらみを風達が少しづつ落としてくれて大地が吸い取ってくれました。ほとんど英語のしゃべれない僕を受け入れてくれる人たち。きれいな笑顔を浮かべるアボリジニ。
すべてのものと人たちに尽き得ぬ感謝を!!
G’day mate!!